しゃちほこファイナンス

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知る運転資金、するキャッシュフロー経営、下げる高い金利

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あっという間に2017年が終わってしまった。清水寺では同年を振り返り「北」という一文字を当て込めた。同様に自身の2017年にひとつつけるとすれば「脱」だったかと思う。いままでの人生でこだわっていたものは意外にも大したことないものばかりであった。転職は悪か否か、婚約という言葉の重みとは何か、借金で増える可能性と削られる選択肢。世間の共通認識として出来上がっている「正」と「悪」。当事者になってわかる「真」と「偽」。去年1年間は囚われの観念からの「脱」だった。そんなこんなで迎える新年、2018年1回目は「運転資金」。数字としてのBSではなく、企業活動の実態からBSができあがるイメージを捉えることが肝要と思われる。そんな「脱」体験となれば幸いである。

 

1.運転資金とは。

 

 一般的に運転資金は次のように定義される。いつものWikipediaからの転用となるが、簡単に言えば、営業活動における各数値を加減算していることが見て取れる。

経常運転資金(正味営業運転資金)=売上債権(売掛金+受取手形)+棚卸資産-買入債務(買掛金+支払手形)(運転資金 - Wikipedia

 

 この運転資金の構成要素は、いずれもBS残高から導かれることになるが、一つずつの項目を企業活動の視点からみていくと次のようになるかと思われる。

 

(1)売上債権…販売先への債権残高。販売先への販売が多くなれば増えるし、販売先への支払猶予期間(いわゆる掛け期間)が伸びても増える。

(2)棚卸資産…いわゆる在庫。販売を見越してたくさん仕入れれば残高は増える。買った在庫が全然捌けない状況でも在庫は積みあがり在庫は増える。

(3)買入債務…仕入先への債務残高。仕入れが増えれば当然債務残高も増えるだろうし、支払先から供与されている支払猶予期間がのびても残高は増える。

 

2.単純な商流を想定する

 

  実際の企業活動を想定したい。単純な買って売っての商売をしている、月商100の商店があった。いつもの仕入先への支払いは3カ月の掛けで行っており、また、慣習的に2カ月の在庫を保有、お得意の販売先へは2カ月の掛けで販売をしている。

 

 ある月に販売された100の商品を入金サイド、支払サイドのそれぞれで考えてみると、入金サイドは在庫2カ月+債権回収2カ月の計4カ月を要し、支払サイドは3カ月の期間となることがわかる。簡略的な図で示すと次のようになる。

 

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 ここでいう運転資金とは赤の囲い線で括った箇所になる。つまり、入金と支払のタイムラグ(=資金負担期間)となる。入金が4か月後になるのに対し、支払いは3カ月後に行わなければならない。このギャップとなる1カ月の間、この商店では100の資金を先行して支払う(=100の資金負担が生じる)ことになる。

 

3.BSへの転換

 

 冒頭、企業活動からBSができることをイメージいただければ、といった旨を述べた。上述の資金負担の簡略図を回転したものが、以下となるが、どこかで見覚えはないだろうか?そう、バランスシートである。上では「〇カ月」との表記が、ここでは「〇百」となっているだけ。ほかは見る向きが変わっただけとなる。

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 継続的に月商100の商売ができているとき、ともなって仕入、在庫、販売が発生する。そのため各勘定科目の残高は「1カ月の商売100×各期間」に応じた数値となるわけである。(※仕入だけに注目して考えると、1月仕入100は3カ月後となる4月に支払期日を迎えることになる。2月も、3月も、4月も仕入があるが、4月には1月の支払期日が到来するため、4月末には2~4月分の仕入債務300が残る形。これは月の仕入100×支払猶予期間3カ月の結果になる。)

 

 このとき運転資金は赤囲い線の100となる。バランスシートはDrとCrがバランスすることがその所以であるため、この100をどうにか賄う必要がある。企業体によって異なるが、資本金だったり借入金だったりするわけであるが。

 

終わりに

 

 以上、運転資金の実態を簡易的に述べたが、本説明では売買の利ザヤを考慮していないこと、一商流のみを取り上げているため複数の商流から成る実態商売はより複雑であること、バランスシート上は投融資等の別勘定が存在すること、には留意が必要。

 

 しかしながら、企業活動において運転資金の実態を把握することは、資金繰りを管理するうえでまずすべきことと思われる。なぜならば、バランスシートの変動は運転資金の増減によるところが大きく、ともなって生じる必要資金を財務担当は調達する必要があるからである。(≒投融資の期中変動は微小、もしくはmanageable)

 

 各企業体が金融機関から資金を調達する場合には、運転資金の生じる所以を説明材料とすることで説得力が増すものになると思われ、各経営者においては自身の会社の必要資金が生まれる要因を企業活動まで落としこんで分析されることをオススメしたい。金融機関はリスクに応じたスプレッドを課すわけだが、企業活動が明確に把握できれば、不明瞭な企業活動体への融資よりも資金使途が明確となり、不確実性(=リスク)は低減すると思われ、貸出における金利スプレッドも良化すると想像する。それ以上に、各人が企業活動と資金発生への理解を深めることに、一番の価値があると思われる。

 

以  上